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人に求められてるものを追求するとどうなるのか

2026/03/25 by 泉川貴広

マーケティングと芸術は矛盾するのか。


正直、ずっと矛盾すると思ってた。というか、矛盾するに決まってると思い込んでた。売れるものを作るっていうのは、どこかで自分の音楽を曲げることだと。好きなことだけやって食えないか、妥協して数字を取りにいくか。その二択しかないと思ってた。


まぁ、ミュージシャンあるあるだと思う。

「俺は売れ線なんかやらねぇ」って言いながらライブのチケットが売れなくて困ってる人。逆に「マーケット見てます」って言いながら、なんか音楽がどんどんつまらなくなっていく人。どっちも見てきたし、正直どっちの気持ちも分かる。僕はよりよいクオリティの音楽をやっていれば、全ては上手くいくと思っていた方だった。



今年に入ってから、ちょっと実験的なことを始めた。

僕の音楽やサービスを利用してくれている人たちが「本当に何を求めてるのか」を、ちゃんとデータで見てみようと思った。再生数とか、コメント数とか、そういう表面的な数字じゃなくて。もっと奥にあるもの。なんていうか、言葉にされてない欲求みたいなもの。


プロの人は「潜在ニーズ」って呼ぶらしい。音楽やってる人間からは嫌悪感を感じるレベルの遠い世界の話に聞こえた。

でもまぁ、やってみた。


SNSやSpotifyのデータとか、コメントの傾向とか、どの回でどういう反応があったかとか。そういうのを一個一個見ていくと、面白いことに気づいた。

再生数が多い回と、本当に深く届いてる回は、全然違うということ。


再生数が回るものは、やっぱりキャッチーなトピックだったり、サムネイルが良かったり、アルゴリズムに乗っただけだったりする。でも、そういう回のコメントやリスナーは意外と薄い。「面白かったです!」「おしゃれ!」で終わる。


一方で、再生数はそこそこでも、ものすごく長いコメントがついたり、「世界が変わった、大きな発見をした、希望をもらえた」などと言ってもらえるものがある。そっちの方が明らかに、聴いてくれてる人の中で何かが動いてる。


ここで、本題なんだけど

その「深く届いてるもの」で僕が何をやってたかというと、別にマーケティング的に計算して作ったコンテンツというわけではない。むしろ逆で、自分が本当に面白いと思ってることを、自分の言葉で、かなり突っ込んで話してる回や音楽だった。


つまり、聴いてくれてる人が本当に求めてるものを突き止めようとすると、結局それは「表面的に分かりやすいもの」じゃなくて、「音楽の本質に触れる何か」だった。

人が求めてるものを追求するのと、音楽を追求することって、矛盾しない。

これに気づいた時、けっこう衝撃だった。


ずっと、どこかで「聴く人のことを考える=自分の音楽を薄める」と思ってた。でも実際は違った。表面で求めてること——つまり再生数とか一瞬の反応とか——を追いかけるから薄まるんであって、本当の心の中で人が何を求めてるのかを探って、それを突き止めることは、いい音楽を作ることと直結してる。


じゃあ「表面のニーズ」と「潜在ニーズ」って具体的に何が違うのか。

表面のニーズは、本人が自覚してて、言語化できるもの。「この曲のコード進行を教えてほしい」「このフレーズの弾き方を知りたい」「オシャレな曲が聴きたい」。これはこれで大事なんだけど、ここだけ満たしても「ありがとうございました」で終わる。


潜在ニーズは、本人もうまく言葉にできてないもの。「なんで自分の演奏はプロっぽく聞こえないんだろう」の奥にある「自分で自分の練習を設計できるようになりたい」とか。「このフレーズを覚えたい」の奥にある「音楽を自分の頭で考えられるようになりたい」とか。「オシャレな曲が聴きたい」の奥にある「自分に自信を持ちたい」とか「やる気を出したい」とか。


ここが大事なんだけど、「人の意見を聞く」のと「潜在ニーズを理解する」のは全然違う。表面的なリクエストをそのまま満たすのは、言われた通りにやるだけだ。「本当にいい音楽は難しくて大衆には理解できない」——そういうことを言ってるミュージシャンもいるけど、それは表面的なニーズのことを言ってるんだと思う。


で、この潜在ニーズの方を掘っていくと、必然的に音楽の深い部分に入っていくことになる。表面的なテクニックの話じゃなくて、なぜそうなるのか、どう聴くのか、何を感じるのか。そこに踏み込まないと、潜在ニーズには届かない。


つまり、聴いてくれてる人のことを本気で考えれば考えるほど、音楽そのものを深く理解しないといけなくなる。それによって音楽家としても成長できるし、いい音楽を作ることにもつながる。矛盾しないどころか、同じ方向を向いてる。「究極の利他(マーケティング)」は「究極の芸術の追求」と完全に一致する気がする。


これはライブや教育だけの話じゃなくて、自分がサポートのピアニストとして誰かの音楽を弾いてる時も全く同じだ。

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